秋に自主製作と請負制作を思う

2022年9月も終わりが近づき、キンモクセイの香りとともに秋が来たようです。秋は読書や食欲とも言われますが、衣服も長袖になり重ね着もできる気候になるのでファッションを楽しむ季節でもある、と思っています。皆様はどのように秋を楽しまれますか。

さて私たちと言えば、先ずは8月5日より全国上映された映画「長崎の郵便配達」を視聴頂いた皆様に「ありがとうございます」とお礼をお伝えし、また、上映期間を延長して頂いている劇場、10月から上映して頂ける劇場もあり、心から感謝しています。

また、コロナウイルスの感染もまだまだ安心できないなか、外出禁止などの措置が解除されているものの、景気が少しでもよくなっているかわかりません(実感がありません)。業界というより、私たちの組織においては、まだぜんぜん収益に結びついておらず、日々新しい仕掛けや企画を考えているものの、すぐに収益に結びつくようにはならずにいます。(そんなことより、メッセージを届けるという作品よりも、興行重視のエンタメ作品をつくるべきとネットで叩かれそうですが、いつもそういう葛藤のすえエンタメではない方を選んでしまいます)

 

この自主製作作品においては、さらなる上映にむけて配給会社が営業を展開し、同時にメディア展開をして頂くこととなります(放送や配信やパッケージ販売など従来のメディアから検討していく予定です)。ただ、このような自主製作の場合、すぐに製作の収益になることはなく、契約で定められた一定期間で清算となりますので、次の製作の製作企画をスタートするための制作費に直結することはありません。そのため、すでに構想段階から企画に落とし込んでいる次回作のロケハンや資料収集やインタビューなど含め、その資金を捻出するためにプロデューサーをはじめとする企画スタッフは奮闘している現状です。

クラウドファンディングなどの資金を集める手法もありますが、制作プロセスにおいて、一般の皆様に対してプレゼンできるのは、企画し調査やロケハンが完了し、そして脚本またはシノプシスができ、内容によってはキャスティングが完了したあとの、ロケ撮影(またはセット撮影)そして編集という段階になってから、になるかと思います。しかしながら、構想から企画、脚本・シノプシスに落とし込むまでに、場合によっては何度も失敗に終わるロケハンや調査もあり、この部分の予算の掛け方によって、自主製作の作品内容や質に大きく影響することになります。日本では、構想から企画におとす段階で相談できるところも、補助金や助成金などの支援もありません。全てが計画され予算もスケジュールも明確になってからの支援しかありません。海外の芸術を理解できている国では、例えばA4ペライチの構想段階でも支援者がついたりしますが、日本では聞いたことがありません。それでどうしているかといえば、プロデューサーや監督が自腹で企画し、脚本やシノプシスまで落とし込んでいると思います。企画段階のプロデューサーと、制作が決まって(企画書、脚本・シノプシスなどが出来上がって)から制作資金のためのプロデューサー(エグゼクティブプロデューサーとも言われます)とは、肩書きが同じでも制作への役割や著作者としての関与が全く異なります。

そういう状況から、私たちの場合は自主製作の作品制作をおこなうためのひとつの活動として、請負制作があります。企業や商品のコマーシャルやブランディング、プロモーションなどの映像制作を受注します。ただ、請負制作専門の制作会社もいるなかで、自主製作を行いながらというやり方は、ビジネスとしては弱い部分もあり、発注者(社)に理解して発注頂かないといけないところでもあります。その他にも、映像制作以外でも自分たちで履行できること(イベント運営など)は請負するし、また、過去の作品の個人上映会への貸出しなども行なっています。ブルーレイなどの販売もありますが、在庫をつくるための予算や宣伝も必要になるため、今後サブスク配信などをすすめたいと考えています。とにもかくにも、日本ではまだビジネスとして成り立っていない業界であるといってよいと思います。

 

自主製作を行う個人や中小企業はたくさんあると思います。でも、文化庁などの補助金や助成金にすべての製作者が選出されるわけでもなく、かつ、あとは作るだけという段階からしか支援されない現状です。さらに(先のブログにも書きましたが)、常に進化し続け質を高め(例えばグローバルに向けて)とすることがかなり困難であるにもかかわらず、この日本においてはその支援者になるうる富裕層が「メリットやリターン」を優先しているため、欧州のオペラ界のようにはならないことは明らかです。それでも、どんなに遠くに感じる青空であっても、いつかその空の下で満足のいく作品をつくりあげたいという志を消さないでいたいと思います。

_